刑事裁判の流れ
逮捕後捜査が進められて起訴されると「刑事裁判」が始まります。
刑事裁判では有罪か無罪かが決まりますが、有罪になったら「前科」がついてしまいます。
今回は、刑事裁判の流れや種類、有罪率や無罪を勝ち取る方法等について、山口の弁護士が解説します。
1.刑事裁判が始まるタイミング
刑事裁判は検察官が「起訴」したときに始まりますが、その前には「逮捕」や「勾留」「捜査」などの手続きが行われます。
一般的に刑事手続は、警察が捜査を開始して被疑者を逮捕したり書類送検したりするところから始まります。
その後、捜査が進められ、検察官が「起訴の必要がある」と判断した場合にのみ刑事裁判になります。不起訴になれば刑事裁判にはなりません。
不起訴率について
平成30年における犯罪白書によると、平成29年(2017年)における刑法犯の起訴率は37.5%、薬物犯罪などの特別法犯の起訴率は51.5%となっています。
逮捕されても半数以上は「不起訴処分」となり、刑事裁判になっていないのが現状です。
http://hakusyo1.moj.go.jp/jp/65/nfm/n65_2_2_2_3_0.html
2.刑事裁判の有罪率
日本では不起訴率が50%を超えており高い状況ですが、反面いったん刑事裁判となったら有罪率が非常に高いので注意が必要です。
刑事裁判では毎年「有罪率が99.9%以上(2017年には刑事裁判の総数が299,319件、無罪判決が130件なので有罪率が99.96%)」となっており、刑事裁判で無罪を勝ち取るのは非常に困難といえます。
ただし、この数字には「当初から被告人が罪を認めて争っていない事案」が多数含まれていることには注意が必要です。
無罪の根拠や証拠があれば、刑事裁判で無罪を勝ち取れる可能性もあるので、冤罪で逮捕されているならあきらめる必要はありません。
3.刑事裁判の種類
刑事裁判には略式裁判と通常裁判の2種類があります。
3-1.略式裁判
書類上だけで行われる簡単な刑事裁判です。
あらゆる刑事事件について期日を開いて審理すると裁判所の人員やコストが不足するので、軽微な事件については書類上だけの審理で済ませています
略式裁判にできるのは以下の条件を満たすケースです。
- ○ 100万円以下の罰金または科料が適用される
- ○ 被疑者が罪を認めている
- ○ 被疑者が略式裁判に同意している
3-2.通常裁判
通常裁判は、裁判所で審理が開かれる原則的な刑事裁判です。被告人は毎回の期日に法廷へ出廷しなければなりません。
懲役刑や禁固刑が適用されるケースや本人が否認しているケースなどでは必ず通常裁判が選択されます。検察官が通常裁判を選択して起訴することを「公判請求」といいます。
4.略式裁判の流れ
略式裁判が選択されると、書類上で被告人に罰金や科料の支払いを命じる判決が下されます。被告人が命じられたお金を納付すると刑事手続が終了します。
捜査段階で身柄拘束(勾留)されていた場合には、略式請求されると解放されます。
在宅捜査だった場合には自宅宛に罰金の納付書が郵送されるので、指示に従って払えば刑事手続が終わります。
略式裁判で罰金や科料の支払い命令が出たときに納付しないで放置していると、検察庁から督促が来て、最終的に「労役場で強制労働」させられます。
刑罰が下されたらきちんと支払いをしましょう。
なお、略式裁判でも「前科」はつきます。罰金や科料で済んだら軽く考える方がいますが、前科がついて次に何かあったときにはより重く処分される可能性が高くなるので、注意が必要です。
5.公判請求された場合の刑事裁判の流れ
公判請求された場合の刑事裁判の流れは、以下のようになります。
5-1.人定質問
被告人が起訴されている本人かどうか確かめるため、人定質問が行われます。裁判官から名前や住所、職業などを尋ねられます。
5-2.起訴状の朗読と認否
検察官が起訴状を朗読し、「罪となるべき事実」を明らかにします。被告人はその内容が正しいか間違っているか認否を行います。冤罪なら「間違っている」と言いましょう。
5-3.冒頭陳述
検察官が、被告人の経歴や事実関係などについて要旨をまとめて裁判官に説明します。ただし、被告人側の認識と異なっているケースもあります。
否認事件などでは弁護側からも冒頭陳述を行うケースがあります。
5-4.証拠調べ
検察官が捜査によって集めた証拠を提出します。
弁護側がその証拠を認めるかどうかを認否し、違法収集証拠などの排除も申し立てます。
また、弁護側からも被告人に有利となる証拠を提出します。
その上で証人尋問や被告人本人に対する質問を行います。
5-5.論告・求刑と弁論
検察官側から「被告人にどのような罪を与えるのが適当か」をまとめた論告が読み上げられ、求刑されます。このとき検察官の求める刑罰の内容が明らかになります。
弁護側はなるべく罪を軽くするよう求める弁論を行います。無罪を主張するケースでは「被告人が無罪である理由」を述べます。
5-6.判決
すべての審理が終わったら、裁判所が判決を言い渡します。
有罪になった場合、被告人は2週間以内であれば控訴できます。
無罪になれば刑事手続は終了しますが、検察官側が控訴する可能性はあります。
6.無罪を勝ち取る方法
刑事裁判で無罪を勝ち取るのは簡単ではありません。逮捕当初からの適切な対応が必要です。
手続きの途中で供述が変遷すると「信用性」がなくなるので、当初から一貫して否認あるいは黙秘しなければなりません。
否認事件では取り調べもきつくなるので、被疑者が耐えて黙秘や否認を貫くには弁護人による助けが不可欠です。
また、公判でも積極的に「無罪の証拠」を提示しなければ事実上無罪を勝ち取ることは難しくなっています。
冤罪で逮捕されたら早急に弁護士までご相談ください。
7.前科を避けるには不起訴処分が有効
実際に罪を犯した場合、裁判になるとほぼ確実に有罪になります。
そういったケースで前科を避けるには「刑事裁判を回避する」しかありません。つまり「不起訴処分」を獲得することです。
不起訴処分になればそもそも刑事裁判にならないので、前科はつきません。
痴漢や盗撮、万引きなど被害者のいる事件の場合、起訴決定前に示談ができれば不起訴処分を獲得できるケースも多数あります。
そうはいっても逮捕されたご本人やご家族が不起訴処分に向けた対応をするのは非常に困難です。
効果的に対応するには刑事弁護人が必要ですので、お困りの際にはすぐに山口の弁護士へご相談ください。
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