前科をつけたくない方へ
痴漢や盗撮、万引き、詐欺などの犯罪によって有罪判決を受けると「前科」がついてしまいます。
前科とは、犯罪によって有罪の確定判決を受けた経歴です。一度前科がつくと一生消してもらうことはできません。
今回は「前科」がつくことによる不利益の内容や、前科をつけない方法について、山口の弁護士が解説します。
1.前科とは
1-1.そもそも前科とは何か
前科とは、刑事裁判で「有罪判決」を受けて刑が確定した経歴です。「前科」は法律用語ではありませんが、一般によく使われている言葉です。
たとえば、盗みを働いて裁判となり懲役1年の判決が出て刑務所で数か月間過ごした場合、窃盗罪の前科がつきます。
実際にはやっていない「えん罪」のケースでも、有罪判決が確定したら前科がついてしまうので注意が必要です。
一方、実際に罪を犯していても刑事裁判にならなければ有罪判決が出ないので前科はつきません。逮捕されても不起訴になったら前科を避けられます。
1-2.前科情報が管理される場所
前科情報は、検察庁や警察のデータベースで保管されます。
前科のある人が別の罪を犯して逮捕された場合、前科情報を照会されるので「再犯」である事実が判明し、次の処分は以前のものより重くなります。
市町村でも「犯罪人名簿」が保管されていて、前科情報を確認できるようになっています。選挙権や被選挙権の管理をするためです。
なお、検察庁や警察の前科情報、市町村の犯罪人名簿は一般には一切公開されないので、これらによって家族や会社を始めとする一般社会へ前科を知られる可能性はありません。
1-3.前科情報が保管される期間
前科情報には「〇年」などの保管期限がありません。本人が死亡して戸籍が抹消されるまで保管され続けます。削除依頼も不可能で、一回前科がつくと一生情報が残ります。
2.前科がつく不利益とは
もしも犯罪の前科がついてしまったらどういった不利益が及ぶのか、みていきましょう。
2-1.資格の制限
前科があると資格を取り消されたり制限されたりするケースがあります。
たとえば、医師や看護師の場合、罰金以上の刑罰を受けると免許を取り消される可能性があり、再取得も認められないケースが少なくありません。
公務員の場合、禁固以上の刑罰を受けると職を解かれる事由になり、公務員試験の受験資格も失います。
他にも弁護士や税理士、建築士、調理師など、資格が制限される仕事がたくさんあります。
2-2.仕事や就職の不利益
前科がついても勤務先に知られるとは限りません。
ただ、逮捕勾留による長期欠勤が続くと知られてしまう可能性があります。
また、実名報道されてしまったら、世間一般に知られるので当然会社にも把握されるでしょう。
前科があっても必ず解雇できるわけではありませんが、裁判になって有罪判決が出ると、解雇される可能性が高くなってしまいます。
またネット上に実名報道のニュース記事が残ると、「実名検索」をされたときに犯罪行為を知られてしまうリスクが高まります。
新たに就職しようとするとき、相手企業が実名検索をして「この応募者は犯罪利益のある人だ」と知れば、就職を見送られてしまうかも知れません。
2-3.社会生活における制限
禁錮や懲役などの前科がつくと、選挙権や被選挙権が停止される可能性があります。
また「旅券法違反」の前科がついたらパスポートが発行されず、海外出張や海外旅行が難しくなるケースがあります。
海外出張できないことがきっかけで会社に前科を知られたり、新婚旅行に行けないことがきっかけで婚約者や配偶者に前科を知られたりするリスクも発生します。
2-4.差別
実名報道により犯罪行為が大々的に世に知れてしまったら、さまざまな差別や偏見にさらされるでしょう。
本人が会社や学校にいづらくなることはもちろん、配偶者や子ども、親兄弟が不利益を受ける可能性もあります。
嫌がらせを受けて引っ越しや転職を余儀なくされるケースもあるかも知れません。
3.前科がつくケースとつかないケース
3-1.前科がつくケース
前科がつくのは、刑事裁判で有罪判決を受けて確定したケースです。以下のような場合にも前科がつくので注意が必要です。
○ 在宅捜査、略式請求で罰金や科料の刑罰を受けたとき
軽微な犯罪で被疑者が認めていると、被疑者在宅のままで捜査が進められ、略式請求で罰金や科料の刑罰が下されるケースがよくあります。 この場合、被疑者は一度も身柄拘束されず裁判所にも行かないので「前科がついた」とは考えない方がいますが、略式請求で罰金や科料となった場合にも前科がつくので注意が必要です。○ 交通違反
スピード違反や飲酒運転などの交通違反によって刑事事件となる場合、窃盗などの犯罪とは異なるイメージですし、在宅捜査や略式請求が多いこともあって軽く考える方がたくさんいます。 しかし、交通違反によって刑事事件となれば「道路交通法違反」という犯罪であり、前科になります。逮捕されず裁判所に一回も行かなかったとしても前科がつきます。3-2.前科がつかないケース
○ 不起訴処分になった場合
たとえ逮捕されても、実際には罪を犯した場合であっても「不起訴処分」になれば前科はつきません。 起訴されなければ略式裁判も正式裁判も行われず、有罪判決が下されることもないからです。 犯罪白書によると刑法犯の不起訴率は60%を超えており、犯罪にもよりますが不可能ではありません。 前科をつけたくなければまずは不起訴処分を目指すべきといえます。○ 無罪判決
正式裁判になっても無罪判決を獲得できれば前科はつきません。 ただし、日本の刑事裁判では有罪率が99.9%を超えており、無罪判決の獲得は相当難しくなっています。4.前科をつけないための対処方法
前科をつけないためには、逮捕当初からの的確な対応が必要です。
4-1.被害者のいる犯罪
被害者がいる事案であれば早急に示談交渉を進め、成立させて検察官へと不起訴の申し入れを行います。
4-2.被害者のいない犯罪
被害者のいない事案では、初犯であること、被疑者が反省していること、再犯可能性がないことなど被疑者に有利な事情を示して不起訴にするよう申し入れます。
4-3.無罪主張するケース
えん罪で刑事裁判になってしまった場合には、効果的な無罪立証を行って無罪判決の獲得を目指します。
こうした的確な対応をするには、刑事弁護人によるスピーディな活動が非常に重要です。刑事事件では時間が経てば経つほど、効果的な対応が難しくなってしまいますので、「前科をつけたくない」方は今すぐにでも山口の弁護士にご相談ください。逮捕前の対応も可能です。
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