判決に不服がある方へ
窃盗罪、詐欺罪、痴漢(迷惑防止条例違反)などで「有罪判決」が出ると納得できないケースがあるものです。
- ○ えん罪なのに有罪にされた
- ○ 刑罰が重すぎる
1.控訴と上告
刑事裁判の判決に不服があるときには「控訴」や「上告」という手続きによって争うことが可能です。
控訴とは第1審の判決に不服があるときに上位の裁判所へ異議申立をする手続きです。控訴審で被告人側の主張が認められると1審の判決が変更されたり効力が失われたりする可能性があります。
刑事裁判の場合、第1審が地方裁判所でも簡易裁判所でも控訴先の第2審の裁判所は「高等裁判所」となります。
高等裁判所は全国各地に8つ存在しており、第1審の裁判所の場所によって高等裁判所の管轄が決まります。
上告は、第2審の高等裁判所における判決へ不服があるときに最高裁判所へ異議申立をする手続きです。最高裁判所は東京に1つだけ存在します。
控訴審で不服が認められなくても、上告が認められれば被告人側の主張が通る可能性があります。
2.控訴審の破棄率と裁判員裁判
控訴すると、どの程度の割合で第1審の判決が覆るものでしょうか?
ここに通常の裁判と裁判員裁判とで破棄率が異なるというデータがあります。
通常の裁判は、痴漢や窃盗などの犯罪のケースで行われる原則的な裁判で、裁判員がかかわらないものです。この場合、破棄率はだいたい10~11%程度となっています。
裁判員裁判は殺人や強盗、放火などの重大犯罪に適用される裁判手続きで、国民から選任された裁判員が関わります。
裁判員裁判の場合、制度の開始から年々破棄率が上昇し2016年の段階で破棄率が13%になっています。
参考
https://blog.goo.ne.jp/ueyamalo/e/f259e6387baceec2e801cbcf910c6696
このように裁判員裁判の破棄率が高めなのは、控訴審に裁判員がかかわらないことが影響しています。
第1審では国民の代表者である裁判員の意見に判決が左右されますが、控訴審以降では裁判員がかかわらず職業裁判官のみが判断します。判断する人の性質が異なるため、結論が変更されやすくなっているのです。
第1審が裁判員裁判だった場合に控訴すると、比較的判決を変更してもらいやすい状況といえるでしょう。
3.控訴すべきケースとは
判決に対して不服があり控訴を検討した方が良いのは以下のようなケースです。
3-1.本当は罪を犯していないのに有罪判決にされた
痴漢や窃盗、詐欺などの犯罪行為をしていないのに起訴されて有罪になったら前科がついてしまいます。
殺人罪などで実刑判決を受けたら、実際にはやっていない罪で何年も刑務所に行かねばなりません。
このように「実際にはやっていない場合」「えん罪」「無実の罪」のケースで有罪判決が下されたら、必ず控訴すべきです。
3-2.執行猶予がつかなかった
執行猶予がつくかどうか微妙な案件で実刑になってしまったときにも控訴する価値があります。
特に一審判決までに被害者との示談が間に合わなかった場合、控訴審の最中に示談できれば刑罰を変更してもらえる可能性が高くなります。
3-3.刑期が長すぎる
実刑を避けられないケースでも、予想外に刑期が長くなった場合には控訴を検討しましょう。
事件内容によっては刑期を短縮してもらえる可能性があります。
被害者との示談が間に合わず刑期が長くなった場合、控訴審で被害弁償できれば刑期を短縮してもらえる可能性が高くなります。
3-4.その他判決が重すぎるケース
罰金が高すぎる、死刑判決になったなど、その他の判決で刑罰が重すぎると感じる場合にも控訴して争いましょう。
4.控訴審で不利益変更はされない
控訴すると「かえって刑罰を重くされないのだろうか?」と不安に感じる方もおられます。
その心配は要りません。控訴審では「不利益変更」が禁止されているからです。
不利益変更とは、控訴を申し立てた人に対して不利益に判決を変更することです。
被告人が控訴した場合、被告人に適用される刑罰が原審より重くなることはありません。
ただし、以下のような判決は不利益変更に該当しないと考えられています。
○ 刑罰は変わらないが、事実認定が被告人に不利に変更される
「不利益変更されない」というのは、「最終的に言い渡される刑罰を重くされる可能性はない」という意味です。
事実認定のレベルではマイナスになる可能性があります。
○ 懲役刑や禁固刑から罰金刑へ変更される
罰金刑は懲役刑や禁固刑より軽いとされています。
執行猶予がついていた場合に控訴して罰金刑に変更されるとお金を用意しなければならないので注意が必要です。
5.控訴の期限
控訴には期限があります。必ず判決後2週間以内に「控訴状」を地方裁判所などの第1審裁判所へ提出しなければなりません。
控訴状の書面上の宛先は「高等裁判所」ですが、提出先は地方裁判所などの第1審裁判所なので注意が必要です。
2週間の期限を過ぎると判決が確定して控訴が一切受け付けられなくなるので、早めに対応しましょう。
6.控訴審の流れ
6-1.控訴状の提出
控訴審は控訴状の提出から始まります。判決を受けたら早めに控訴するかどうかを検討し、納得できないなら早期に控訴状を提出しましょう。控訴状には詳細な不服理由を書く必要はありません。
6-2.控訴趣意書の提出
控訴すると、高等裁判所から「控訴趣意書」を提出するように要求されます。控訴趣意書とは、控訴の詳細な理由書です。
控訴審で判断を覆すには控訴趣意書が非常に重要です。高等裁判所は第1審の記録と控訴趣意書を読み込んで、第1審判決を変更するか決定するからです。
控訴趣意書が説得的な内容であれば、判決が変更される可能性が高くなります。
無罪主張するケース、量刑不当を主張するケースなど、状況に応じた内容にせねばなりません。
控訴趣意書には提出期限がもうけられるので、急いで作成する必要もあります。
6-3.控訴審の審理
控訴趣意書を提出したら、控訴審で審理が開かれます。
控訴審であらためて証拠調べや証人尋問などが行われることは基本的にありません。
提出できるのは「第1審後に生じた事由を証明する資料」や「第1審段階では入手できなかった証拠」に限られます。
6-4.判決
控訴審の判決が下されます。
7.上告について
控訴審の判決にも納得できなければ上告が可能です。ただ上告で判決が変更されるケースは憲法違反や判例に反する判決が出た場合など非常に限定されます。
8.上告が退けられたときの異議申立方法について
上告が退けられた場合には3日以内に異議申立てができます。形式的な間違いがあった場合には10日以内に訂正の申立てが可能となっています。
刑事事件の判決に異議を申し立てて覆すには、刑事弁護の専門スキルが必要です。
控訴状や控訴趣意書提出までの期間制限もありますので、山口で有罪判決を受けて不服のある方は、お早めにご相談ください。
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